校長室より  校長 鈴木 斎 

 

2021年1月8日 令和2年度第3学期始業式 式辞

 皆さん、おはようございます。全校生徒の皆さんとともに、新しい年、そして新しい学期を迎えることができますことを、大変うれしく思います。しかし、愛媛県内でも連日20人を超える感染者が報告されている中、今回は、全校生徒が体育館に集まることはできません。年末年始における親戚や家族との会合等による感染事例が、複数報告されている今、私たち全員が、できる限りの感染回避行動を取らなければ、感染拡大を止めることはできません。一日でも早く「私たちの当たり前の日常」を取り戻すために、全校生徒の皆さん一人一人の自覚ある行動を期待しています。

 さて、令和3年の干支は牛です。牛を使ったことわざはいろいろありますが、本日は、私の好きな短いことわざを紹介します。それは、「牛も千里、馬も千里」ということわざです。1里は昔の単位で約4kmのことですから、千里というのは、約4,000km、です。地球一周の距離が約40,000kmですから、地球一周の約10分の1という長い距離を表現しています。ですから、この「牛も千里、馬も千里」ということわざは、「早くても遅くても、それぞれの歩みを進めていれば、どんな遠くにある目標へも、いずれは到達できる」という意味です。

 私たち人間は、「人と比べたがる生き物」です。そして、「人と比べることによって、たくさんの大切なものを失ってしまう生き物」です。例えば、かけっこをしているときに、競走をしている相手と自分とを比べることによって、勝っている時には油断して、負けている時には諦めて、自分自身のスピードを緩め、場合によっては走ることさえやめてしまいます。

 70歳を過ぎ、今もなお、輝き続けるロックミュージシャン、矢沢永吉氏は、家庭環境に恵まれず、極めて貧しい少年時代を過ごしましたが、高校卒業と同時に、トランクとギター、そしてアルバイトで貯めた5万円を持って、生まれ育った広島から最終の夜行列車で上京し、自らの夢に向かって走り続けました。もし、彼が、自らの恵まれない環境を走れない理由として、夢に向かって走り続けることをやめていたら、私たちが知っているその後の彼はありません。

 皆さんはどんな夢を持って新年を迎えましたか。1月1日の朝日新聞に、岡山県の9歳の女の子の、こんな投書が掲載されていました。一部抜粋して紹介させていただきます。

 わたしは、今年こそ逆上がりができるようになりたいです。まだできないけれど、がんばりたいという気持ちはあります。努力だけはしないといけないと思います。たくさん練習して、逆上がりができるようになったら、とっても嬉しいと思います。

 皆さん一人一人にも、この女の子にとっての「逆上がり」が、つまり、できるようになることを目指してがんばりたいものが、必ずあると思います。令和3年が、皆さん一人一人が、それぞれの夢を目指してそれぞれの努力をする、そんな希望に満ちた一年になることを期待して式辞といたします。


2020年12月18日 令和2年度第2学期終業式 式辞

 みなさん、おはようございます。

 本日、「笑顔で挨拶ができる」「人の話がちゃんと聞ける」そんな、全校生徒の皆さんとともに、第2学期終業式を迎えることができますことを、大変うれしく思います。

 さて、今年10月16日に公開されました「劇場版『鬼滅の刃』」が歴史的な興行記録を次々に打ち立て、話題となっています。漫画「鬼滅の刃」の魅力について、日本経済大学坂口将史先生は、ある記事の中で、こんな風に書かれていました。一部抜粋して紹介させていただきます。

 本作には、ひた向きに生きる人々が多数登場する。「鬼滅の刃」でその生きざまが描かれるのは「主人公とその仲間たち」といった主要人物だけではない。ともすれば「その他大勢」としての扱いを受けてもおかしくない人々の活躍や葛藤にもスポットが当てられる。そして鬼の支配者との最終決戦では、上層部から末端までの「鬼殺隊」全員が全力を出し切ることで、「勝利の糸口」が見え始めるのだ。

 坂口先生は、たくさんの登場人物が、「その他大勢」として扱われることなく、一人一人の登場人物にスポットが当てられ、一人一人の登場人物が大切にされている、そしてそのことが私たち読者を引き付ける、と言われています。「鬼滅の刃」という作品では、しばしば登場人物たちの過去、楽しい過去、悲しい過去、寂しい過去が描かれます。そして、その様々な過去を背負った人たちが、それぞれの不安や悩みを抱えながら、それぞれの今をひた向きに生きている姿が描かれます。私たちの周りにいる人たちもみんな、それぞれの過去を背負っています。私たちの周りにいる人たちもみんな、それぞれの不安や悩みを抱えています。それでもみんな、それぞれの一度限りの人生を、ひたむきに、一生懸命に生きています。皆さんは、皆さんの周りにいる人たちを「その他大勢」として扱っていませんか。皆さんは、皆さんの周りにいる人たち一人一人にスポットを当てていますか。皆さんは、皆さんの周りにいる人たち一人一人を大切にしていますか。

 土居高校が、誰一人として「その他大勢」として扱われることなく、一人一人にスポットが当てられ、一人一人が大切にされる、そんな学校であるために、土居高校という舞台の登場人物である皆さん一人一人が、「自分に何ができるのか」を考え、実行してくれることをお願いして、式辞といたします。


2020年8月21日 令和2年度第2学期始業式 式辞

 みなさん、おはようございます。

 本日、夏休みの様々な経験を通して、さらにたくましく成長した皆さんとともに、令和2年度第二学期始業式を迎えることができることを、本当にうれしく思います。

 皆さんは、映画監督宮崎駿氏の作品、「未来少年コナン」というアニメをご存知でしょうか。そのアニメの冒頭で、少年コナンとコナンのおじいさんが、「のこされ島」という島で2人だけで暮らしていました。コナンのおじいさんが、亡くなる直前に、自分が死んだあと「のこされ島」でただ一人の人間になってしまうコナンに言ったセリフが私の心に残りましたので、紹介させていただきます。

 「人は一人で生きてはならない。仲間を見つけ、仲間のために生きろ」

 おじいさんは、コナンが自分一人の力で魚を捕り、獣を狩り、木の実を採取することができることを、つまり、「一人で生きていける」ことを知っています。それでも、「一人で生きてはならない」と言います。独りぼっちになってしまえば、誰かのために生きることはできません。彼は、愛する孫に、自分のためだけに生きるような人生を送ってほしくはなかったのだと思います。

 今年の夏、全国高等学校野球選手権愛媛県大会が中止となり、その代替大会として、愛媛県高等学校夏季野球大会が開かれました。8月4日の愛媛新聞に、高校生活最後の試合を終えた、本校野球部エース鈴木渉太くんのコメントが載せられていました。読み上げさせていただきます。

 「空回りというか、1回戦とは違う雰囲気にのまれてしまった。みんなに申し訳ない。いい後輩に恵まれ、小学1年からの野球人生で一番充実した2年半だった。」

 野球を通して仲間に出会い、高校生活最後の試合で仲間のために精一杯の投球をした彼は、結果的に空回りをし、雰囲気にのまれてしまったのかもしれません。でも、その結果に関係なく、ここ土居高校での部活動を、仲間たちのお陰で「一番充実した2年半だった」と振り返ってくれています。

 私たち人間には、一人では決して味わうことのできない感動があります。仲間がいるからこそ感じることのできる「喜び」、仲間がいるからこそ感じることのできる「怒り」、仲間がいるからこそ感じることのできる「悲しさ」、仲間がいるからこそ感じることのできる「楽しさ」、そういったものが必ずあると思います。その感動こそが、私たちに「未来に向けた次の一歩を踏み出させてくれるエネルギーの源」だと私は思います。

 私たちの周りにはたくさんの人たちがいます。時には喧嘩をすることもあります。でも、一人では喧嘩もできません。だから、みんな、仲間です。2学期には、運動会、文化祭などの学校行事、部活動では新人戦や高文祭などが行われます。3年生の皆さんは、いよいよ進路実現本番の時期を迎えます。それぞれの場面で、皆さん一人一人が、仲間とともに、仲間のために、今自分にできる精一杯の取組をし、そして、その経験を大きな力に変えて、それぞれの未来に向けて、一歩一歩、歩みを進めてくれることを期待して式辞といたします。


2020年7月31日 令和2年度第1学期終業式 式辞 

 みなさん、おはようございます。

 例年よりも10日ほど遅くなりましたが、本日、皆さんとともに令和2年度第一学期終業式を迎えることができることを、うれしく思います。

 「土居高校の生徒はみんな、気持ちの良い挨拶をしてくれる」「土居高校の生徒はみんな、人の話をしっかりと聞いてくれる」今学期も本校を訪問された方々が、口を揃えて皆さんのことを褒めてくれました。「挨拶ができること」「人の話をきちんと聞くことができること」皆さんは、この2つのことに共通していることは何だと思いますか。私は、それは「優しさ」だと思います。優しいという字は、「人偏に憂う」と書きます。つまり「人のことを心配する」と書きます。「廊下ですれちがっても挨拶をしてくれなかったら、寂しい気持ちになるんじゃないかな」「授業や講演会で話していても話を聞いてくれなかったら、きっとその人は悲しい気持ちになるだろうな」皆さんは、優しい気持ちでそんな風に相手のことを心配できるからこそ、挨拶ができ、そして人の話をきちんと聞くことができるのだと私は思います。

 優しさのない行為として大きな社会問題となっているものの一つとして挙げられるのが、ネット上での誹謗中傷です。ある人を見下し、その人の言動、外見、性格等々を非難し、場合によっては人格そのものを否定します。投稿している本人は自分のコメントが正しいと信じて書き込んでいるのでしょうが、それはその人の側から見た一方的な「正しさ」に過ぎません。一方的な「正しさ」は往々にして対立を生みます。そして、お互いがお互いを傷つけあう醜い事態を招きます。例えば、国と国とが一方的な「正しさ」を主張し合うと、最後には何よりも大切なはずのたくさんの命を奪い合う戦争が起こってしまいます。私たちが「正しさ」を主張するときに決して忘れてはならないのは「優しさ」という視点です。ある人が「正しさ」と「優しさ」の関係についてこんな風に述べています。

 「正しさ」と「優しさ」を天秤にかければ、僕は、優しさを優先したい。正しさは、優しさの後についてくるものなんじゃないかなあ

 私たち人間には、人として決して失ってはならないものがあります。その中の一つが「優しさ」だと私は思います。挨拶ができ、人の話をきちんと聞くことができる皆さんが、これからも、その優しさを大切にしてくれることをお願いして、式辞といたします。


2020年4月8日 令和2年度入学式 式辞

 校庭の桜や草木に春の息吹が感じられる今日の佳き日に、ご来賓の皆様、保護者の皆様のご臨席を賜り、かくも厳粛に、令和2年度愛媛県立土居高等学校入学式を挙行できますことは、教職員一同の大きな喜びであります。

 ただ今、入学を許可いたしました85名の新入生の皆さん、入学おめでとう。皆さんの本校への入学を心から祝福し、そして歓迎いたします。

 また、保護者の皆様におかれましては、立派に成長されたお子様の晴れ姿に、感慨もひとしおのことと拝察いたしますとともに、衷心よりお慶び申し上げます。

 さて、新入生の皆さんは、去る3月17日に たくさんの人達に祝福され、それぞれの中学校を卒業しました。巣立ちの時を迎えた皆さんに、皆さんの担任の先生はどんな話をしてくれましたか。皆さんと別れなければならないことへの悲しみや寂しさ、皆さんに出会えたことへの喜びや感謝、皆さんの希望に満ちた将来への激励や期待、そんな語りつくすことのできない思いを、心を込めて話してくれたのではないでしょうか。

 本日は、新入生の皆さんに、エベレストをはじめとした世界の/標高8000メートルを超える14の山々、そのすべての登頂に日本人として初めて成功した登山家竹内洋岳さんの高校時代の恩師が、卒業式後の最後のホームルームで、学び舎を巣立とうとしている生徒たちに贈った短いはなむけの言葉を紹介したいと思います。それは、「前だけが人生だ」という言葉です。私たちは、物事がうまくいかなくなると、昔の出来事のせいにしてしまうことがあります。でも、過去にとらわれすぎていると、私たちは前に進むことはできません。皆さんも、これから始まる高校生活の中で、何かの困難や障害に出会うことが必ずあると思います。そんなときは、過去を悔いたり言い訳をしたりすることよりも、「前だけが人生だ」という言葉を思い出して、「将来自分はどんな人間になりたいのか」、「将来自分は何がしたいのか」、そんなことに思いを巡らせながら、一歩一歩、それぞれの歩みを進めてください。

  終わりになりましたが、保護者の皆様、本日をもちまして、お子様は本校の生徒となりました。皆様がこれまで手塩にかけて大切に育てられてきたお子様のさらなる成長は、保護者の皆様、そして私たち教職員の共通の願いです。お互いのお互いに対する理解と信頼を子どもたちの成長を後押しする大きな力に変えて、誠心誠意、全力で、教育活動に取り組んでいく決意でございますので、ご理解・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

 新入生の皆さんが、本日の感激を忘れることなく、前途洋々たる未来に向けて、有意義な高校生活を送られることを期待して、式辞といたします。


2020年4月8日 令和2年度第1学期始業式 式辞 

 皆さん、おはようございます。

 最初に、新型コロナウイルス感染拡大という状況の中、「世の中に命より大切なものなどない」ということを再確認し、「私たち自身の命を守るため」、「私たちの家族、友人など大切な人たちの命を守るため」、「私たちが生かされている社会を守るため」、感染予防に関して、学校内外での生活について細心かつ十分な注意を払ってもらうよう、改めてお願いいたします。今はもう、「自分は感染するはずがない」と考えることのできる時期ではないと思います。「もしかしたら自分も感染するかもしれない」と本気で考えなければならない時期を迎えていると思います。

 さて、皆さんは、約1か月間に及ぶ臨時休業の間、登校して、授業を受けて、部活動に励む、そんな、「それまでは当たり前だと思っていたこと」ができない状況の中で、どんな気持ちで毎日を過ごしていましたか。

 「当たり前」ということに関して、柔道男子90キロ級東京オリンピック日本代表内定選手、向 翔一郎(むかい しょういちろう)選手は、あるインタビューで、こんな風に話されています。

 自分のなかで成長したと思うことは、感謝する気持ち。誰かがいて当たり前、何かがあって当たり前じゃないということを学び、そういった感謝の気持ちができたことで今の自分がいると思います。

 繰り返します。

 自分のなかで成長したと思うことは、感謝する気持ち。誰かがいて当たり前、何かがあって当たり前じゃないということを学び、そういった感謝の気持ちができたことで今の自分がいると思います。

 彼は、「それまで当たり前だと思っていたこと」が実は当たり前でないということに気づけたことが、自らの成長の原動力だと話されています。

 世界には、貧困、紛争、災害など様々な理由で学校に通うことのできない子どもたちがたくさんいます。ある統計によれば、現在、就学年齢に達しても小学校に通うことのできない子どもたちは世界中で約6,700万人いると言われています。世界規模で見れば、学校に通えることは、決して当たり前ではないということです。

 そんな中で、本日、様々な制限の中ではありますが、私たちは、新しい学年をともにスタートすることができます。令和2年度が、私たち一人一人に「命の大切さ」そして「感謝することの大切さ」を教えてくれる飛躍の年になることを期待して、式辞といたします。